「仕事だ」

カウンターに座った松岡の一言で、亮二の手が止まる。

「ある駐屯地に、紅林という自衛隊員がいる。お前の『手帳』にも名前が載っている…陸上自衛隊の幹部だ」

「…そいつを殺れと?」

目線は氷に向けたまま、亮二は言う。

氷に振るうアイスピックに、心なしか力がこもった気がしたのは、松岡の気のせいか。

「何をやったんですか、ソイツ」

「標的の罪状なんて関係ねぇ。依頼が来たら黙ってソイツを殺る。それが俺達の役目だ」

つまり殺し屋であり暗殺者。

亮二や松岡が身を窶しているのは、そんな穢れた商売だった。

「それに…」

カウンターに肘をつき、松岡は両手を組み合わせる。

「紅林が何やってようが関係ねぇだろ…お前の手帳に名前が載っている…それで殺す理由になる筈だ…違うか?」