それは、懐かしむようで悲しそうな表情だ。

普段無口な先生がたくさん話してくれるのは、
嬉しいけど何だか切なくなった。

お酒の力を借りないと話せない内容のようで

「あの…奥さんが亡くなったのは、
病気だったからですよね?」

「あぁ、元々生まれつき心臓が弱い奴だったからな。
睦月が赤ん坊の頃に心臓が原因でな…」

そうなんだ…。

先生の切なそうな表情を見て思った。

今でも奥さんの事を心の底から愛しているのだと
嫌いで別れた訳ではないのだから当然といえば当然か

離れたくて離れた訳ではない。

生きていたら睦月君と3人で幸せにココで
暮らしていたのだろう。

それこそ、私の入る隙も無いぐらいに

ズキッと胸が痛みだした。

動揺しながらも気持ちを落ち着かせようとする。

「そうなんですか…すみません。
辛い事を思い出させてしまって」

「いや、いい。
どうせ少しは、河合さんから聞いているだろ?
隠している訳ではないしな」

そう言いながら先生は、お酒を飲んだ。

先生は、もう再婚とか考えていないのだろうか?

奥さんを今でも大切に想っている人だ。
考えている可能性は、低いだろう。

それでも…。

「先生は、その…再婚とか考えていないのですか?」

思い切って尋ねてしまった。

だが、

「……あれほどの女が現れるなんて考えられん。
これからもな」

冷たく言い放つ先生だった。