「あの人にって…奥様のお父様にですか?」

認められてないって、どうして?

そうすると先生は、コンビニで
買ったコーヒーを飲んだ。

「俺と妻…沙織は、デキ婚だ。
大学生の時にアイツのお腹に睦月を宿した。
もちろん猛反対されたけどな」

デキ婚…。

大学生に出会ったと聞いていたし
先生の年から考えると
そうなのかも知れないけど
何だかショックを受ける。

「……まぁ、無理もない。
沙織の父親は、かなりの資産家だからな。
まだデビューすらしていない大学生の上に
この外見では、反対もしたくもなるだろう。
しかし、俺も沙織も諦める気なんてなかった。
特に沙織は、譲らなくて…」

「だから、家族の反対を押し切って結婚した。
まぁ、駈け落ちってヤツだ。
大事な一人娘を奪ったあげく亡くした。
憎まれて当然だろ」

そう話した先生の表情は、どこか寂しそうだった。

先生にそんな過去が…。
胸がズキッと痛み出し切なくなってしまう。

「でも、お見舞いに行かれたんですよね?
可愛いお孫さんの睦月君を連れて行ったら
きっと…」

「いや、会いに行っても振り向いても
もらえなかった。
お義母さんは、優しい人だったから良かったが
受け入れてもらおうなんて虫のいい話なのかもな。
それより、食ったのなら帰るぞ。仕事があるんだ」

先生は、そう言うと立ち上り行ってしまう。

「えっ?あ、待って下さい」

慌てて私も立ち上がった。

先生と奥さんのお父様との間には、確執がある。

せっかく孫の睦月君が居るのに
どうにか出来ないものだろうか?

何か仲直り出来るいい方法は…?

先生の自宅に行くと洗濯物をたたみながら
そんな事を考え込んだ。

きっとお父様は、先生の事を変に
誤解をしているのだろう。