「あの…それは…」

言ってもいいのだろうか?

でも、こんな事は私が言う権利なんか

「おい。さっさと言え」

「は、はい。あの…さっき話を聞いて
奥様のお義父様の具合が悪くて
入院なさっているとか…」

「あっ?聞いたのか…それで、
お前が泣くのとどう関係があるんだよ?」

意味が分からないためか
先生は、眉をひそめた。

「それは…私だけ知らなかったのが
寂しかったといいますか。
他にも色々ありまして…だから…すみません」

申し訳なさそうに頭を下げた。

伝えないけど、これ以上言えなかった。

「だから俺のせいだと、言いたいのか?」

「ち、違います!!
私が勝手に泣いただけで先生は、
何も悪くありません。
それに先生の手が優しくて…だから」

もう自分が何を言っているのか
分からなくなってしまう。

私の馬鹿…。

すると先生は、
私の頭をポンッと撫でてきた。

「何を言いたいのかイマイチ
分からないが、泣くな。
泣くと調子が狂う」

ぶっきらぼうながらそんな事を言ってくれた。

「…先生……」

先生の優しい手が私に触れ
胸がきゅんと締め付けられた。

「それに言わなかったのは、
言えなかっただけだ。
俺は、まだあの人に
認められた訳ではないからな」

えっ……?