「悪いな。睦月のために買ってくれて
だが、何でスイーツ雑誌なんだ?」

不思議そうに雑誌を見る先生だった。

「最初は、絵本にするつもりだったのですが
こっちの方が気に入ると思いまして
どうやら正解だったみたいですね。ねぇ?」

苦笑いしながら睦月君を見る。

すっかり雑誌に釘付けの睦月君は、
こちらを見ようともしない。

どうやらハマッてしまったようだ。

それを見ながらため息を吐く先生。

「ありゃあ、その内にいろんなお店に
行きたがるな…コイツ」

そうぼやく先生を見てさらに苦笑いする。

少しずつだが、前が動き出した。

私達も前に進み待つ。
その繰り返しをする事…30分。

確かに、これだけ並んでいると
よく並べるなと思ってしまう。

途中で先生に抱っこを代わってもらうが
睦月君は、待つのに疲れて眠ってしまった。

「ったく、行きたがっていた張本人にが
真っ先に寝るなよ」

ブツブツと文句を言いつつも
落ちないように抱き直す先生。

背中をポンポンとあやしながら

「フフッ…」

その姿を見つめる。

何だかほっこりして優しい気持ちになった。
すると私のスマホが鳴り出した。

「あ、私の携帯からだわ!?
ちょっと失礼します」

慌てて少し離れると電話に出た。

『どうだ?小野木。
蓮見先生は、許可を貰えたか?』

電話の相手は、編集長だった。

あっ!?

お店に並ぶのに夢中になり過ぎて
目的をすっかり忘れていた。

いけない…説得をしないといけないのだったわ!?

「すみません。
まだ…これから説得してみます」

編集長に平謝りをしながら電話を切った。

何とかしないと怒られちゃう。