「…ということが、江戸時代にはあったのよ!!」

「へぇ~。ステキな話だね。」

以外と普通だったからつまんなかった…

「あー!今、『以外と普通』とか思ったでしょー!」

「え?何でわかったの?」

「顔に書いてましたー。でも、ここからが本番なのよ!」

それがねー、と話し出す恵。その話が、さっきの500倍ぐらい凄かった。

「それ以来、その橋を渡り終えたところで異性とぶつかったら、その人が運命の人なんだって。実例もあるんだよ?ほら、山下君と神崎さん。あの二人も橋でぶつかったんだって。」

す、すごい…

山下君と神崎さんは、学年、いや学校で一番のラブラブカップル。

あの二人もこの橋でぶつかってたなんて…
それだけじゃないの。この町の結婚者の割合はなんと、四割が橋でぶつかった人達なのよ。

「四割!?」

嘘でしょ!?四割なんて。まさか。

「そ。四割。すごいでしょ?星見橋のジンクスは本物よ。絶対!」

「そりゃ本物かもね…」

「あそこ通る度に期待してんだけどね…」
「ぶつかれないのね。ドーンマイっ!」

あからさまに落ち込んだ顔をする恵の肩をパシッと叩き、軽い口調で慰める。

「いたいよ~!でもまぁ、ぶつかれるといいなぁ~」

「がんばれー。まぁ、ムリだと思うけどー。」

「もー、結美は毒舌なんだからーっ!」

「そうかな?」

「そうなのっ!」

恵は必死に言うけど、私は自覚無し。そんなに毒舌かな~?

そんなことを考えてると家についた。

「今日は盛り上がったね~。」

「そうだね。じゃ、また明日ね。」

「おやすみ~。」

ガチャ…と戸を開ける音と同時に、「ニャーン」という声が聞こえる。

「ただいま、ジュリー。」

独り暮らしの私には、唯一の家族。ジュリーが居ると安心する。

「…明日も早いし、もう寝よっかな…」

私はジュリーに餌をあげたあと、明かりを消して眠りについた。