キミ色の夏







「女の子を叩くとか、お前ほんっと最低だね」






トイレの入り口から、凛とした声が響いた。


剛くんの動きがピタリと止まったのとほぼ同じタイミングで、私は目を開く。



「兄貴よりも先に着いちゃったけど、まぁ緊急事態だし仕方ないね」



剛くんの体越しに見えたのは、汗を拭う男の子。

柚希くんの弟の瑞希くんだった。



「瑞希……お前、なんでここが……」

「ま、人の居ない場所って言ったらここくらいだしね。
ホテル行く金なんか無いだろうし、第一、そんな場所に柳井が着いていくはずがない。
それに、コレが居場所を教えてくれたよ」



瑞希くんが持っていたのは、ブルーのラベルのペットボトル。

さっき、私が地面に落としてしまったやつだ……。



「柳井、3度は言わないからよく聞きな? こんな奴のことはさっさと忘れること。 いいね?」



いつもと変わらない笑顔。

それを見た瞬間に、私の目からはもっともっと涙が溢れ出した。






「……クソが。 ほんっとに、うぜぇな」



剛くんが、私を投げ捨てるように勢いよく手を離した。

私はそのまま よろめき、床に座り込む。


……立とうとしても足が動かない。

今頃になって全身に悪寒が走り、震えが止まらない……。