「……柚希くんは、私のそばに居てくれたんだよ」
地面に落ちたペットボトルを静かに見つめる。
柚希くんのお気に入りで、今では私も大好きになったスポーツドリンク。
花火大会の日も二人で飲んでいたし、その前だってそう。
私が屋上前の踊り場で泣いていた時も、
剛くんに別れを切り出されて、暗い道を泣きながら帰っていた時も。
柚希くんから渡されたスポーツドリンクが、私の涙を消してくれた。
ううん、違う。
柚希くんが私の涙を消して、笑顔にしてくれたんだ。
「……剛くんじゃないんだよ」
私が泣いてる時に隣に居てくれたのは、剛くんじゃない。
私を笑顔にしてくれたのは、
いつだって柚希くんだよ。
「私は柚希くんと一緒に居る。 あの人の言葉を信じるよ」
「……俺と過ごした時間よりも、アイツとの『ひととき』を信じるのか?」
剛くんの言う通り、柚希くんと過ごした時間は『ひととき』だ。
1年の時から笑い合ってた剛くんとは違う。
柚希くんと一緒に過ごした時間は、本当に本当に短いものだけど。
でも……──、
「私が信じるのは柚希くんだよ」
──……信じたいって思うのは、剛くんじゃなくて柚希くんなんだ。



