「トッコ」
久しぶりにそう呼ばれ、体がビクッとなる。
女の子の友達には『トッコ』と呼ばれるけど、
男の子でそう呼ぶのは剛くんだけ。
柚希くんも瑞希くんも私のことは『柳井』って呼んでるから、
あだ名で呼ばれるのは本当に久しぶりだ。
「最近、元気してた?」
「あ……うん、大丈夫……」
「そっか。 図書館で勉強してたの?」
「……うん」
この辺りは図書館以外は全然何も無い。
そんな場所に私が居たから、
『図書館で勉強してたんだな』
って、気付いたんだと思う。
それにしても、
剛くんは当たり前のように私に話しかけてくる。
言葉の感じは柔らかくて、付き合ってた時と同じ……。
「ねぇトッコ、午後は俺も図書館行くんだけど、一緒に勉強しない?」
「……っ……」
……そう言って微笑んだ顔は、
私が大好きな顔そのものだった。
昇降口での冷たい視線が嘘のように、
彼は今 私を見て微笑んでいた。



