「私、この1月の本番で引退するねん」
隠していたわけじゃないけど、そう言うと、門田はひどく驚いた顔をした。
普通、和太鼓部は、高3の文化祭を区切りに引退する。
それを考えると、私は半年以上も前に引退することになるから、驚かれるのも無理はない。
「やっぱ勉強優先?」
「うん」
もうこの話は親や顧問の了解は得ている。
同じクラブ仲間にも話している。
「それになんか、後輩とも上手くやっていけないし」
そう本音を漏らすと、門田が興味深そうに顔を覗き込んできた。
「後輩との間に溝があるっていうか……。練習してても、あんまり楽しくないし」
「あー。モチベーション上がらへんねんな」
その通りだったので、コクコク頷いた。
そんな後輩だから、まだ私が辞めるって言うのを話してない。
というか、ギリギリまで話さない予定。
もちろん、最後まできっちり後輩の指導はするつもりだし、練習にも取り組むつもりだ。
だけど、どうせ辞めるならあっさり辞めたい。
ある日突然消えてったって、そんな感じで部活生活を終わらせたい。
そのためにも、今まで通り、この冬は部活と勉強に一生懸命になる。


