誰よりも大切なひとだから。




8時15分。


首にマフラーを巻いた学ラン姿の長野くんが来た。


「あ。近藤さん。今日も英語やってる」


自分の席に着く前に私の机を覗いていった長野くんが話しかけてくれた。


驚いて、振り返る。


私の右斜め後ろの席に鞄を置きながら、長野くんが私の方を見ていた。


「いつも、英語してるやんな。近藤さん」


こんなにも、近くの席にいるのだが、長野くんが私に話しかけてくれたのは、ほぼ初めてに等しかった。


私も話しかけたことなんて、なかった。


一昨日の、東先生の家に遊びに行ってから、少し心を開いてくれたのかもしれない。


「英語苦手やねん。模試でもいつも英語が足引っ張ってるから」


「そうなんや。俺もやらなあかんわ。そろそろ」


彼の目が真剣な目になる。


「もう、今日で2学期終わりやもんな」


そう。月曜日の昨日は祝日で休みだったけど、今日は修了式。


つまりは成績が返ってくる日。
憂鬱だ。


「冬休み明けたら、3学期だね」


「"3年生の0学期"やろ?この冬で基礎学力固めやなあかん」


"3年生の0学期"


それは先生方の間でずっと言われている言葉だ。


二年生の3学期に、受験の勝負はスタートする。


自分で決めた目標があるとはいえ、正直、怖い。


1年後の自分が見えないから。