*.**.**.*
私は昔から、ポーカーフェイスが得意だ。
だから、私が長野くんの行動にドキドキして心がかき乱されたことに、気づいたのは、きっと、私だけ。
だけど、確かに私は感情の変化を自覚した。
……話しかけたい。長野くん。
もう一回、あの笑顔が見たい。
帰りの電車に揺られながら、そんなことを思った。
長野くんは今、他の男子と喋っている。
私に見せるその背中は、遠い。
私と同じ背丈の背中。
男子にしては、随分、細身で小柄。
……どうしよう。
その背中に声をかけたい。
彼が最寄り駅で降りてしまう前に、"また学校でね"って、言いたい。
"今日は楽しかったね"でもいい。
……何か言いたい。
帰る前に、バイバイの前にもう一回、笑っているのを見たい。
だけど、彼は、私の存在なんて忘れたかのように、おしゃべりに夢中だ。


