里ちゃんの周囲で盛り上がる私たちの中に、まだほんのり顔が赤い東先生が入ってくる。
「えらい、里ちゃんとこ盛り上がってるやん」
「あ、健ちゃん」
東先生は"里ちゃん"、里ちゃんは"健ちゃん"と呼ぶ。
小6から付き合い始めて、かれこれ42年間寄り添いあっているお二人は、生徒を前にしても、ラブラブだ。
「みんな、お話がとても面白いのよ」
「それはよかった。みんなを呼んで正解だったな」
東先生がコトンと私たちの前の机に何かを置いた。
……お皿?
「俺が朝から焼いたパンケーキや。まぁ、食え!」
お昼ごはんに出された食事も見事だったが、このパンケーキもすごい。
「おいしそう!!」
どこかのケーキ屋さんに行けば売ってそうだ。
遠慮なく、食べる。
見た目は味も裏切らず、美味しい。
むしろ、洋酒の味しかしないケーキ屋さんのお菓子より何倍も美味しい。
先生は紅茶も入れて、
「砂糖とミルクもあるから、好きに使えよ」
そう言い残して、台所があるらしい方へ消えていった。
里ちゃんが、お砂糖何個?と訊くのを、丁寧にお断りする。
紅茶はストレートでないと飲めないのだ。
「苦くない?ストレートティー」
長野くんが聞いてくる。
「私、甘ったるいのって、苦手やねん」
「そうなんや。すごい」
何がすごいのかはわからないが、長野くんに褒められた。


