誰よりも大切なひとだから。




しばらくして電話が切れた。


切ったつもりはなかったけど、画面に当たってしまっていたのか、それとも時間切れになったか、突然、彼からの返事が途絶えた。


代わりにラインが届いた。


『なんか、電話が切れてた』


『ほんとだ』


通話記録15分。
誰かと電話しても緊張して、2、3分で電話を終える私にしては、最高記録。


『ほんまはさ、直接会って話したかったんやけど……』


長野くんからラインが届く。


本当に誠実なひとだ。
だけど、それは無理。


『直接会ったら、冷静に話せなかったと思う』


きっと私の感情全てが表情のどこかしらに表れて、伝えなくていいことまで伝えてしまいそうだったから。


好きという気持ちが彼を苦しめるのが、目に見えていたから。


『ありがとう。ほんまに嬉しかった』


『そう言ってもらえると、私も嬉しい。これからも大切な友達としてよろしくお願いします』


『もちろん。こちらこそよろしくな』


月曜日。授業が始まれば、会うことになる。
きっと直接会えば、ギクシャクしてしまう。


だけど、ほんの一握りの願いを込めて、ラインを送る。


『また話しかけたら笑ってな。長野くんの笑顔、好きやから』


ひとを温める笑顔。


何を隠そう。
私は彼の優しさと笑顔とおっちょこちょいさに、惚れたのだ。


しばらくして、返事がくる。


『わかった。ほんと、優しいな』


優しい?
それはきっと勘違い。


私は優しくないよ。
強くもないから、優しそうにして、自分の心を守ってる。


きっとそれは、長野くんと一緒。


『真剣に悩ませちゃって、本当にごめんなさい』


ここまで本気に考えてもらえるなんて、思わなかった。


彼の中に葛藤を生んでしまったことに凄く申し訳なかった。


『確かに、初めてだったから正直驚いた。でも、本当に嬉しかった。こちらこそ、気持ちに答えられなくて、ごめん』


彼の方こそ謝ってくれるけど、ちゃんと自分の考えを答えてくれたおかげで、私は心に1つの区切りをつけられそうだった。


『本当にありがとう。おやすみなさい』


私は勝手にラインを終える。


これでもう、終わり。
きっと、二人がこうしてラインを送ることなんてもう二度とない。


それでいい。
これが彼が望んだはずの結果だ。


『おやすみ』


長野くんから返しが来てだけど、私はもう何も返さなかった。