「おはよう、言ちゃん」


「おはようございます、蒔田―マキタさん」


部屋へ入ってきたのは実習生をしている青年だった。

ここは都内で一番大きい病院。

私は外の世界を知らない。

外に出たのは一度だけ。

家からここへ運ばれた時。


「外はもう春なんですね」


外の緑を見る。


「そうだね。窓、開けようか?」