フェンスの向こうで、あいつがマネージャーとやり取りを交わしている。
しかしその視線は定まらず、柿谷の表情に不穏なものがちらつくのがわかった。
(ほらほら、しっかり)
なにかを探すようにそわそわと、身体を揺らしている姿のなんとしまりのないものか。
すかさず副部長の喝が飛ぶのを見て、気の毒に思うのと同時に、痛快だった。
そうそう。
そうやって、ほかに何も手につけられなくなるくらい、めいっぱい心を揉んでしごいて、そして、今以上にかっこよくなって。
――さて、それはそうと日曜の予定はどうしよう。
ない予定のシナリオを立てるのもなかなか骨折りだ。
でも、それでもいい。
彼に振り向いてもらえるなら。
いくらだって、煩わしいこともやってみる。
そのとき、フェンス越しだが、やつとたしかに目が合った。
一瞬で見えなくなったけれど、彼は今、何を思ったことだろう。
高い空に雲はない。
来週、なにかが変わっていればいいと、そう願った。
END

