「レッドカードね」
わたしはシャーペンと消しゴムとをまとめてやつの机に置いた。
「いいのか」
わたしはなにも言わなかった。
一日の授業が終わるといつもなら部活にすっ飛んでいくはずが、その日に限り、男はおもむろにわたしの席の前に来て、
「……ありがとな」
はじめてまともに礼を述べた。
「これっきりだからね」
けれどもわたしはできるだけそっけなく返した。
「……なに?」
「……」
男はまだそこから動かない。
頑なな様子に、かえってわたしのほうが気がかりに思った。やつの部活仲間が廊下で待っているはずだった。

