次の日から、あいつは話しかけてこなくなった。
わたしの方も、やつを不用意に寄せつけないよう冷ややかな態度を取り続けたから無理もなかった。
忘れっぽいうえ物持ちの悪いあいつはしょっちゅうなにかが欠けていて、始終助けを求めるような視線を周囲にくれていた。
消しゴムを忘れた日は悲惨だった。
わたしはやつのために常に2つ消しゴムを持参しているけれど、声をかけられない以上、やつはほかの誰かに借りざるを得なかった。
その日、やつはついにペンケースを丸ごと忘れてきた。
授業が始まってから気づいたのか、不自然な動作がひとしきり続いたかと思うと、男は教科書を開いたまま途方に暮れた。
見ていられなかった。

