ただ、歩くだけで特に会話はない。
頭に中島くんの言葉がグルグル巡る。

ーー…『オレ彼女いるし』

目眩がする。



「今日、楽しくなかった?」
見上げると彼は少し悲しそうな顔をして私を見ていた。
「そんなことないよ」
嘘をつく私の唇はきっと震えていただろう。


「そっか…」
彼の悲しい言葉が宙を舞う。



「ねぇ、小林くん
私なんかのどこを好きになったの?」

唐突すぎる質問に彼は目を丸くして、顔を赤く染めた。


「……雰囲気、かな。
話したこともないじゃん。
一目惚れ、だったんだよね…。
アヤがいるだけで柔らかい雰囲気が感じられてさ。
あぁ、俺、この人好きだな…って思ったの」


雰囲気が、とかキモいよね。
そう言って悲しく笑った。



雰囲気…痛いほどわかるその気持ち。
涙が溢れて止まらなかった。

中島くん、中島くん……