ギュっと握った手を、彼はまたギュっと握り返す。
目に涙が滲んで、それを落とさないように顔を上に上げると、彼はどこか切なそうな顔で、私を見つめていた。


「小林くん?」

「アヤ、ごめんね。…俺のこと許してくれる?」

自信なさげに言葉を発する彼に、ゆっくり頷くと、彼は安堵のため息を漏らした。


「はぁー。良かった…。
アヤに嫌われたら生きていけねぇよ…」

その言葉がとても嬉しくて、また彼の手をギュっと握った。



「…隠し事、しないで…ね」

はにかんだ笑顔は、一瞬で真っ暗闇が支配する。
彼の匂いが鼻を刺激した。


「…うん。しない。絶対に…」


どこか遠くで、チョークが黒板を走る音が聞こえる。
ザワザワとした生徒の話す声も…。


でも、私たちの間にある静寂した空気は、私を安心させた。

抱きしめられた部分が熱を持つ。
彼の背中に手を回すと、私の右手と左手がぶつかり合った。


そのまま、ゆっくり目を瞑ると、世界で2人しかいないーーそんな感覚に陥った。