ティムがからかうように言うと、マシューも「Hey」と、あごを軽く上げて挨拶した。
ぼくも携帯をしまいながら、笑顔で「Hey」と答えた。
「美耶子はもう行ったんか?」
「いや、今空港にいるって」
「そっか・・・。寂しくなるな」
そのとき、ぼくたち三人は、ふと見上げた空の彼方に、小さな飛行機雲を見つけた。
あの飛行機に美耶子が乗っているはずはないが、ぼくたちはしばらくそのまま、空を駆ける小さな白線を、目で追い続けていた。
「行こうぜ。キョウジも来るだろ?」
ティムが言った。
ぼくがいいのかい、と訊ねると、モチロン、と日本語で言った。
ぼくはふたりのあとに続いて歩きながら、再び空の飛行機雲に目をやった。
美耶子からのテキストメッセージには、理由はよくわからないが、なんとなく返事をしない方がいいような気がした。そのかわり、ぼくは心のなかで、彼女に心からのエールを送った。
(がんばれ美耶子!ぼくも必ず、こっちで毎日を楽しく生きてみせる!)
「おーいキョウジ」
少し離れた場所からティムがぼくを呼ぶ。
ぼくは飛行機雲に向かって小さく微笑むと、前を向いて、ティムたちの方に走っていった。





(つづく)