翌日の夕方六時半。
結局ぼくはダンスパーティの行われている体育館の前にいた。
ほんの三十分前までは行く気などなかった。
おかしなことを言っているようにきこえるかもしれないが、今も三十分前と気持ちはほとんど変わっていない。
ではなぜぼくはここにいるかというと、うじうじ悩むのに疲れたからだ。
漫画も、ゲームも、音楽も、ぼくの頭のなかでラジオのノイズのように延々と鳴り続ける正体不明の雑音を、掻き消してはくれなかった。
ただそれから逃れたくて、やけになって自転車をここまでかっ飛ばして来ただけだ。
気持ち良い汗をかいたせいか、心の中は意外にも晴れやかだった。しかしいつどんな形でそれがめちゃくちゃにされるかわからないという警戒心は、いつも以上に強くなっていた。

体育館の中に入ると、流行のダンスミュージックががんがん鳴り響いていて、広いバスケットコートでみんなが馬鹿みたいに腰を振って踊りまわっている。
熱烈にキスをしたり、抱擁を交わしているカップルも、あちこちにいる。
日本では、彼女や彼氏ができても、みんなできるだけ隠していたものなのに、この国では信じられないような光景が当たり前のように目撃される。
とても自分にあんな真似ができるとは思えないし、何よりしたくない。
日本人はシャイだと奴らは言うのかもしれないが、ぼくに言わせれば、お前らは品がなさすぎるんだ。