静かな病室。
赤い夕焼けが白い壁紙を鮮やかに染め上げた。

僕はいま遺書を書いている。

たくさんの宛先に苦労しながら一文字一文字丁寧に綴っていく。
今は何人目だろうか。
でも相当の量を書いたらしく、手が真っ黒になっていてとても痛い。
最近自分の事も分からなくなっていた。何をしたのか、どこが痛いのか、どんな夢を見たのか。
軽い記憶喪失状態。
はげた先生はそう言っていた。
でも軽いってなんだろうか。重いと僕は耐えられないのだろうか。
今までなんとなく過ごしてきた日々を酷く後悔する…とまではいかないが、また会いたい人は大勢いる。
だが少しずつ絞っていけば少ない人数になるんだろうが、今とても心残りがある人なら一人いる。

そしていま、その人への遺書を書こうとしている。

最後のメッセージ。僕は前のことを思い出しながらシャーペンを握った。