「あんた…神楽坂。
どういうことなの。」

「姉貴。
俺ら部屋出よう。」

「は?
奏楽。
あんた、手。
離しなさい。
美波の気持ち、考えてんの?
それでそんなこと言ってんの?
美波が何を望んでいるかわかってないの?」

「…蓮。
頑張って。」



そういいながらまだ言いたいことが山ほどありそうで。
怒りが鮮明に出ている佐藤の手を奏楽が引いて部屋を出ていった。
奏楽にはたくさんの相談をした。
年下とはいえども、考え方が大人で。
落ち着いている奏楽は俺の悩みに必死に考えて応えてくれた。
俺のこのことに関しても前からしっかりと注意をしてくれていて。


「先輩として、失格だよね。
ごめんね。」


なんて言わせてしまった自分自身がとても悔しかった。
奏楽のせいではない。
もはやだれのせいでもないんだ。
この世界に入るときに選択しなくてはいけなかったこと。
その現実に向き合うことが嫌で逃げ続けていた暁だったのかもしれない。