「日向、お前この後どうすんの?」

HR終了のチャイムが鳴るなり、前の席に座っていた東塚が、いつもと同じように訊ねてくる。


「あー、俺は図書室行くわ。」


少し考えてから、気だるけな返事をすると、東塚は少し驚いた顔をした。

「でも委員会だろ?部活ってわけじゃねぇんだから、そんな毎日のように行かなくてもいいんじゃね?」


「まぁ確かにそうなんだけど、この時間に帰っても暇だしな。ギリギリまで本読んで時間潰した方がマシだ。」


「お前、ホントに読書が好きだもんな。マジメかっ!ってぐらいに。」


「読書好きなのは認めるが、その間誰とも干渉せずに済むから楽なんだよ。」


そう言うと、『うわぁ…』という顔をされたが、俺は気にせず続けた。


「そういうお前は行かなくていいのか?今日も呼ばれてるんだろ?」 

「残念、今日は何も頼まれてない…。」


(別に、俺にとっては何も残念ではない。)



東塚とは中学からの付き合いだか、彼は俺と同じように面倒な事が嫌いな為、当時から部活には入っていなかった。

だが、運動神経がよく、人当たりも良い彼を運動部員たちが放っておく訳もなく、毎日のように助っ人を頼まれている。


(なるほど。久しぶりに放課後を満喫できるから、誰かと遊んで憂さ晴らしをしたかったってわけか。)


ため息を漏らす友人の気持ちを察したが、常に元気な彼の相手をするのは自分も疲れる。


「なら、たまには早く帰って真面目に課題でもやってろ。じゃあな。」


去り際に軽く手を振りながら言うと、背後から「ええー、マジかよ~」という声が聞こえたが、何も言わずに俺は教室を出た。