高校に入学する、一ヶ月ぐらい前のことだった。
俺は、一人の少女と出会った。


思い出作りに友達と遊んだあとの帰り道、公園のベンチに一人の女の子が座っているのが見えた。

この公園は数年前まで子供たちで溢れていたが、最近、ここより少し広い公園が新しく作られてからというもの、利用する人が少なくなっている。

だからなのかは分からないけれど、俺と年の近い女の子が一人でその公園にいることが不思議に思えた。

それに、この公園の近くに住む学生は大抵が同じ中学で、学年が違っていても見知った顔のやつが多い。
けれど、その少女は見覚えがなかった。


(春から新しく引っ越してきたのかもな。)
 

自分の疑問に自分で答え、俺はその場を去ろうとした。



できるだけ音を立てないように、静かに歩く。

夕日が沈み初め、あまり人もいないこの空間で、他人と目が合い、素通りするのは意外と気まずい。
だからと言って知り合いでもないのに「こんにちは」と挨拶するのも気が引けるからだ。

そう思いながら歩いていたのに、近くの石ころを気付かずに蹴ってしまった。


(あっ…)


コロコロと転がるその音に、ベンチに座っていた少女は肩をビクリと震わせ、やはりこちらに振り返った。


一瞬だけ目があったが、俺は何事もなかったかの様に通りすぎようと思った。

けど、足が動かなかった。


驚いてしまったのだ。


振り返った少女が涙を流していたことに。




見られたくなかったのか、彼女は急いで服の袖で涙を拭った。


それを見てしまい、思っていた以上に気まずい空気にしてしまった俺は、何か言葉を発するしかなかった。


「あ、えっと…」


必死で言葉を探したが、初めて会った女子相手に何か出てくるわけもなく、困った表情を浮かべていると、


「…こんにちは。」


遠慮がちに優しく笑みを浮かべて、彼女の方から話しかけてきた。

少し戸惑ったが、俺もそれに答えるように口を開いた。
















けれど、その時彼女と何を話したのか、
俺は覚えていない---