「いいんだぞ、そのまま鬱になっちまえ!」


「…え?」



僕の顔を見ると、また男はニコリと笑った。



「思う存分鬱になれ!太一くん!
弟のために、妹のために、自分はしっかりしなくちゃいけないって考えを捨ててしまえ!
君は俺たちの家に住んで、思う存分気がすむまで鬱になるんだ。

ーーー今日から君は『鬱坊や』、ウツボな!」




ーーーウツボ……














そして僕は、そのパピヨンという名の男に家へと連れて行かれた。


『自由すぎる女神症候群ハウス』というらしい。ほんと変わった名前。





あれから僕は思う存分鬱になった。



部屋に閉じこもって、ぼーっとして、気がついたら昼も夜も分からなくなっててーーー







でも不思議とーーー



悪い気分はしなかった。


罪悪感も僕の心からどんどん消えていった。



鬱になっていい。

そういう条件が僕のどん底を少しずつ浅くしていったんだーーー