「ーーー星二…」



ふと隣から声がして、私は横を向いた。



するとそこには1人の老人。



車椅子に座り、鼻には管を通し、涙でいっぱいになった目でリングを見つめていた。





「ーーーでかくなったなぁ……星二……」



そう言うと老人は顔を手で覆って泣き始めた。




「……すまんかった…!
…グスッ…諦めろなんて言って……
すまんかった……!
……つらい思いさせちまって……」





ーーーすまんかった………!






「……グスッ」



いつのまにか、私も涙が溢れていた。





『ーーー伝えたかったんだろーな』




兄貴さんは…これを伝えたかったんだ……



『這い上がる勇気』を持って


『生きろ!』って





言いたかったんだーーー










「……グスッ…」





私は這い上がろうとしてた?



『勇気』を持って、這い上がろうとしてた?




ーーーしてない。




這い上がろうとなんてーーー











思ったこともなかったーーー