『──リーダー、……何してるんですか』




『ん…?あぁ、リコさんか…。
 何をしてるかって、見れば分かるだろ?
 僕の可愛い娘を可愛がってるだけだよ』



男がにこっと薄っぺらい笑顔を浮かべると、
女はハァ…、とわざと大きな音を立ててため息を吐いた。


『もう“後ろは詰まってるんですよ。”
 一人にそんな時間をかけられたら困りますー。』


皮肉をたっぷり滲ませた声で言う。
部下が上司に向けるような態度とは考えられないほどだ。



『…リコさん、そうは言うけどさ…
 この子──不思議なんだよねぇ』

『…と、言いますと?』

『あ、そこは丁寧になるんだね
 君は本当に面白い子だなぁ』

『……話を逸らさないでください』

カツ、カツ、カツと高いハイヒールを鳴らしながら男に歩み寄り、
男の頬を千切れんばかりに抓った。


『いひゃっ!ちょっ、分かっひゃっ…からっ!
 そんなに強く抓らなくても良いじゃない…』

少し潤んだ目で女を見つめるが、女はそんなものもろともしない。

『いいから早く話してください
 何が不思議なんですか?』

女は目で男の向かい側に座っている少女を示した。
少女は女が男にとってどんな存在かを探っている。
そのせいか、目には嫉妬の色が浮かんでいた。



『いや…ね、
 この子、“琲斗”さんのこと、とっても嬉しそうに話すんですよ
 “今までの子”は全て琲斗さんの事を憎らしそうに話して、僕に気に入られるようにきったなーい努力みたいなものをしてました』


表情は相変わらず心の読めない笑顔のままだが、男の声のトーンが少し低くなったのを女は聞き逃さなかった。