『へぇ…良かったね』

男は更に目を細める。
そして、頬杖をつき、体をぐい─っと少女の方へ前のめりにした。
一呼吸ついてから、無感情な冷たい声で──







『それなのに僕を選んだんだ』





クス、と笑い、不適な笑みを浮かべる。
それを見た少女は、男に熱っぽい視線を向けた。


「…えぇ、私には貴方しか見えていません」


ほう、とこれもまた熱っぽい吐息を吐き、頬を染めながら少女はそう言った。
──いつから、変わってしまったのか。



『そうか…ふふ、嬉しいよ』


男は素直に嬉しそうに微笑み、且つ何を考えているか分からないような意味深な笑みを深めた。
余程機嫌が良いのか、普段は全くそんな素振りすら見せない彼が少女の頭をくしゃくしゃ、と撫でる。

少女も普段は見せない男のそんな素振りに興奮を高めていた。

──昔は、そんなんじゃ無かったんだ。





いかにも近寄りがたい雰囲気を醸し出している二人の間に、
一人の女が踏み込んできた。