「気づいたら既にそこに居たんです。
それ以前のことは全く覚えていません。

手足の自由は利きませんでした。──あ、でも、喋る事は出来ましたよ。
周りを見ることもできました。…はい、一面真っ白な部屋でした。
天井も壁も床もです。置いてある物も全部。
私はベッドの上で横になっていて──え?あぁ…横に一人、男の人が座っていました。
髪の毛の色はグレーで、白衣を着ていました。…うーん…20代前半だったと思います。
それからは、───」


少女は目の前の男に喋り続けた。
男は時々少女に質問を投げかけるだけで、後は頷くのみ。




──そして、少女が喋り続けて丁度10分が経った頃。
この時をずっと待っていたかのように、男が口を開いた。




『それで、その人との生活は楽しかったの?』


男は少女に試すような視線を向け、そう言った。
それを聞いた少女は一瞬驚いたような表情を見せたが、



「…はい、とー…っても、楽しかったです!」



とても愛らしい笑顔を浮かべ、そう言い切ったのである。