「俺には両親がいない。でも恥ずかしいとも自分が惨めだとも思った事が無い。それを思うと育ててくれた叔母夫婦に申し訳ない。」
そこまで話すと私に顔を向けて来た。
真剣な顔。
私の事を本気で思ってくれている顔。
斉藤君…。
「高梨が今どんな思いでいるのか俺には分からない。けど、俺は高梨が必死に生きているって分かる。だから。」
「だから…。」
私の両肩に強い力が伝わってくる。
両肩を掴んでいる両腕から生きる思いの強さが伝わってくる。
「自分らしく生きればいいと思う。」
「自分、らしく…。」
斉藤君の顔を見ていると、自然と涙が溢れて来た。
涙を拭う私を見て、斉藤君はにっこりと微笑んだ。
「人間は泣いて笑って怒って。それでいいんだよ。」
その言葉に私は素直に頷いた。

