「俺…、斉藤俊樹。1年。」
「…。」
1年…。
同級生…。
「高梨千夏、だろ?」
「どうして私の名前を…。」
そうか。
知ってるよね、私の名前。
私、有名人だから。
汚くて、不潔で、貧乏で。
人間としての価値が無い事で有名な有名人…。
「毎日、ここで空見上げてるよな。」
「…。」
「俺、あんまり空を意識して見上げる事無いから。こうしてみると空って綺麗だな。」
「…。」
俯いたまま、何も話さない私に構う事なく話し続ける斉藤君。
「俺…。」
「…。」
何か話そうとしたが斉藤君はその続きを話そうとしない。
もう人の顔が分かりにくいくらい辺りは暗くなってきている。
暫くの沈黙の後、斉藤君はすっと立ち上がった。
それでも座って俯いたままの私に向かって斉藤君は呟いた。

