「神尾くん」
「ん?」
窓の外を眺めていた神尾くんが私を見る。
「今日、一緒に帰っても、いい?」
「うん、もちろん。どうしたの、改まって(笑)」
神尾くんは少しおかしそうに笑う。
伝える。伝えたい。
彼が好き。
放課後。
無言で並んで歩く帰り道。
やばい、緊張でなにも話せない。
「榎本、公園とか寄り道してみる?」
「えっ!あ、うん!」
沈黙を破ったのは神尾くん。
黙っていた私に気を使ってくれたのかな?
うう、申し訳ない…。
近くの公園は少し狭い。
夕焼けに染まるベンチに腰掛けた。
「で、榎本はなにがあったの?」
「!?な、なんで!?」
「んー、なんとなく?落ち着きないし、帰りも誘ってきたし」
そんなにそわそわしてたんだ…。
どきんどきん、
心臓が痛い。
喉が少し締まる。
がんばるの、決めたから…。
「あ、のね…」
「うん」
じっと見つめる神尾くんの視線が苦しい。
顔が熱い。
「神尾くんのこと、す、好き……です!」
顔が上げられずずっと俯く。
神尾くんがいまどんな顔しているのか、こわくて見ることができない。
「あ、の……、神尾くんがいまも大変な思いしてること分かってる。でも、友達として、じゃなく一番近くで支えたいって本気で思ってるの!神尾くんの優しいところとか、ふわって笑うところとか、人のことよく見れてるところとか、全部、好きです」
止まらない。
返事を聞くのが怖くて、ずっと話続けてしまった。
ひ、引いたかな…。
神尾くんがなにも話さないことが、何よりも辛い。
「……か、神尾くん……なにか、言ってください…」
耐えられなくなり、神尾くんに返事を促す。
「あ、ご、ごめん…。びっくりして…」
我に返ったような、焦った声が聞こえる。
「榎本、俺の事好きなの…?」
「……好き、です…」
「…俺も、榎本好き…です……」

