俺の名前は綾瀬皇。
綾瀬財閥の一人息子で、次期社長と決まっている。
まだ高2だというのに、1つ会社を持つ事になった。
それが昨日――……。
「おはよう。」
教室につき、ドアを開けると、クラス全員の視線が俺に集まる。
……苦手だなぁ、これ。
「綾瀬君、おはよう‼」
と、言ってきたのはクラス1のギャル、種嶋愛美だった。
「……おはよう。」
素っ気ない態度で返事をすると、興奮気味で廊下に駆け出して行った。
……あ。
俺の視線の先には、黒くて綺麗な髪をたなびかせ、窓際で一人読書をしている女の子がいた。
「……和音、おはよう。」
俺は黒金和音、こいつにだけは自分から声をかけている。
……理由は――……好きだから、だと思う。
「……おはよう。」
こいつは、俺にだけ微笑んで返事をしてくれる。
…………らしい。
そんな小さな恋の始まりは、2年前の、入学式の日の事だった。