コートのポケットから森の手帳を出し、テーブルの上に置く。コートは脱いで椅子の背もたれに掛ける。ハンガーもクローゼットの中にあるのだろうが、探す気が起きない。
財布やスマートフォンは渡辺に取り上げられてしまった為、荷物はこれだけだ。
椅子に座って手帳を開くが、文字は頭の中に入って来ない。
普段なら営業日の土曜日だが、先日依頼で休日出勤してもらった代わりに代休にした今日と、特に何もなければ休業日の明日は問題ないだろう。
しかし月曜日の朝、事務所に俺が居なければ、一番最初に出勤してくる莉央は不審に思うはずだ。
月曜までにはなんとか事務所に戻りたいとは思うが、まあ無理だろう。それを見越して書き置きを残してきた。
ここを抜け出せたとしても、財布も渡辺が持っている上に、所員に手を出される可能性も残っている。
ため息を吐いて、手帳に意識を戻す。

