「……宮間くんにはお世話になったのよ。学校を退学した後、何をやっているのかは聞けなかったけど、良い人に囲まれて……幸せそうでよかったわ。……それなのに、何かあったのでしょう?この子絡みで」


女性の最後の言葉を聞いて、え?と顔を見る。


「そういえばね、一昨日来た時にこの子の手帳を借りてもいいか聞かれたの。宮間くんならって渡したのよ。今までそんな事言われた事なかったから、不自然だなって……」


「手帳……そこに、何か書かれているんですか?」


莉央さんが訊くと、女性は困った顔をした。


「あの子の手帳、よくわからないのよ。趣味で推理小説を書いているらしいのだけれど、そのネタ、というのかしら?それがページいっぱいに書いてあるの。暗号みたいでとても解読できないわ。字も汚いし」


「――な……」


女性が苦笑すると、ベッドの上の青年が何かを呟く。


「慎也っ!?」


女性が青年――慎也さんの手を握り、顔を覗き込む。


あたしたちもベッドの周りに駆け寄り、青年を見る。


「……し、つれいな……ほん、き、出せばきれい、だから」


慎也さんは掠れた声で言って女性の顔を見ると、眉を寄せて笑った。


「慎也……!」


女性は目に涙を湛えながら、笑顔を浮かべる。