「……3年前の7月に、家に帰る途中でひき逃げに遭ったの。人通りの少ない道で……救急車が呼ばれたのは事故が起きてから大分経った後だったわ。手術の後に見たこの子の状態はとてもひどいものだった。……事故が起きてすぐに宮間くんが来てくれたわ。そのときはICUにいたから会わせてあげることはできなかったけれど、それでもこまめにきてくれたの。一般病棟に移ってから、初めてこの子の様子を見た時はとても辛そうな顔をしていたわ」
女性は青年を見ると眉根を寄せた。
「……この子、学校でいじめられていたの。本人は決してそのことを私に言おうとしなかったけれど、薄々気付いてはいたわ。……宮間くんはそれを止められなかったことを謝っていた」
ルークは何を持って事故が自分のせいだと言ったのかは分からないが、ひき逃げしたやつが悪い。もし仮に青年が車の前に飛び出したのだとしても、逃げる事は許されない。
通報が遅れたり、青年が病院に運ばれた後にルークがお見舞いに来たりしたのなら、事故現場にルークはいなかったって事になる。
それにいじめに関しても、いじめていたやつが悪い。どういう状況下でのいじめかは分からないが、止めることは難しいだろう。
今の話を聞く限り、ルークに落度なんてない。なのに背負い込んで、謝るって……。
「ルークだなぁ……」
こんな状況で不謹慎だけど、学と顔を合わせて笑ってしまう。
潤佳ちゃんが莉央さんの服の裾を握りながらルークの名前を呟く。
莉央さんは潤佳ちゃんの頭をなでながら「しょうがないね、まったく」と苦笑した。
すると、女性も「宮間くんは、この子から聞いていた通りの子のようね」とくすくす笑い始めた。

