「何だ、鴉、言ってなかったのか?」


「伊月が既に言っているかと」


センパイとルークが顔を見合わせていると、隣のテーブルのユウヤが言う。


「この辺で宮間さんを知らない人はいないんじゃないすかね」


「……ルーク、一体何したの」


ぼそりと莉央さんが呟く。


「3年くらい前によ、ちょっとヤバい奴らに目ぇつけられて喧嘩になったんだよ。それで死にかけた所に、ふらっと現れた鴉がそこにいた奴ら、10人くらいいたかな……そいつらみんな1人でやっちまってな」


ああ、ユウヤが言ってた『オレの先輩の知り合いっつーか恩人』がセンパイだったのか。1人で大人数やっちゃったんならユウヤが憧れるのも頷けるか。


「3年くらい前って慎也くんが事故に遭ったあたり?」


学の質問にルークが頷く。


「そもそも虐め自体をやめさせていれば、誰も傷つかずに済んだんだ。もっと早く何か出来ていたらと考えながら歩いていたら集団で1人に暴力を振るっている場面に出くわした。通り過ぎようとしたんだが、なぜか死にかけてるやつの知り合いと勘違いされて手を出してきたからやっただけだ」


何でもないような表情でルークは言い切る。莉央さんはその横で吹き出す。