彼女は下りの電車でやって来るので、私より3分ほど早く駅に着く。
だから毎日こうして、自販機の所で待っていてくれるのだ。
「なんか、雨降りそうなやな天気だね。
傘持ってきた?無かったら学校にもう一個折りたたみ傘置いてあるから貸すけど。」
低いテンションのまま美羽は言う。
別に怒っている訳ではない。朝に弱いだけなんだ。
空を見ると、確かに灰色の雲が重く立ち込めていた。
私はスクールバッグから折りたたみ傘を取り出してみせる。
「持ってきたよ!見て!フグアンドキャッチャーズのライブグッズなの!」
美羽のテンションなんかお構いなしで、私はそれを見せた。
私の大好きなバンド、フグアンドキャッチャーズ。
なかなか雨が降らず、せっかく買ったこの傘の出番が無かったのだ。
全面にポップなフグがプリントされたその傘を見て、美羽の目にも少し光が宿る。
「へー!可愛いね!こんなのあるんだ!」
「でしょでしょ!」
得意気にいうと、美羽は少しだけ呆れ気味に「好きだねー。」と笑った。


