優しい時刻

サラダをきれいに盛り付けて、テーブルに並べている麻子が小走りに戻ってくる。

「海外帰り? いいなぁ、かっこいい〜ねぇ日樹くんって佑美の」

は?

持っていたフライパンからメインディッシュのハンバーグが落ちるかと思った。

「まさか。お互い恋愛感情ないから、幼なじみで居られたと思うよ〜」


実際、恋愛感情が全くなかった訳ではない。
中学の時、日樹に彼女ができた時はなんだか変な気持ちだった。
それが"スキ"なのか、先に彼女を作られたことへの"悔しさ"かは分からない。

兄妹みたいに育ってきたから、取られた気持ちだったのかもしれない。





「何度も言うようだけど、麻子」
「大丈夫! もしかしたらアオくが見えないかも知れないんでしょ」


夕飯を全てテーブルに並べて、時計を見ると19時を回ってた。
アイスをどこまで買いに行ったんだろ、あの2人。


「でも近くにはいるんだよね」
「あ。日樹には"他の人に見えない"って言うのは伝えてないから」

不思議そうな顔をしつつ、ミニトマトをつまみ食いしながら私を見てる。
私は大きくため息をついて口を開いた。




「本人見えてるのに信じると思う?」



逆に私だったら・・・と考えると、信じられないもん。