今日も私の好きな人…「長良奏太」は空をみている。
奏太には大好きな彼女がいた。でも…
先月事故にあって亡くなってしまった。彼女の名前は「葵空」。とても可愛く、学校内でも人気だった。
葵さんが亡くなってから、奏太は笑顔も減り、授業中は空を眺めることが多くなった。葵さんと同じ、青い空を。
今は放課後。皆が帰り、奏太は残る。友達からかりたノートを写しているのだ。
空も教室も真っ赤にそまり、奏太の少し悲しそうな顔も紅く照らされている。
でもその光のもと。夕日、空を見ることはない。まるで青くない空なんて見る意味はない、とでも言われているようだ。
私の名前は「月野茜」。青以外の空も奏太をみている…。気づいてよ…そう願うだけ。行動なんて起こせない。
そう思っていたけれど今日は違う。私は日直で残り、奏太はノートを書いているので残っている。今日こそ話しかけて笑わせてやる!葵さん以外にも奏太を笑わせられるんだよ!
「あ、あのさ…!」日誌を書く手を止め声をかける。「何?」想像はしていたけど一つも笑みを浮かべない表情、冷たい声…。挫けそうになるけれどそれでも頑張るって決めたんだ!
「それ…手伝おうか?」「いい、悪いし」会話が続かない…色々質問してみたけど「うん」とか「別に」とか素っ気ない返事ばかり。次第には「終わったなら帰れよ」と言われてしまった。私は「うん…じゃあね」それだけ行って教室を出た。頑張るって決めたはずなんだけど…だめだなぁ。そんなことを思いながら校門へ行くと忘れ物をしていたことに気づく。明日提出のプリントだ、とりに行かなきゃ!私は来たばかりの道を戻り教室についた。中からは「う…うぅ…」と奏太の泣く声が聞こえてくる。「空…」「会いたいよ…」と泣く声に混じって悲しみをまとった声が聞こえてくる。
「俺の、せいで…空ぁ…ごめん…っ」
「俺なんて居なければ…っ」
その言葉を聞いた瞬間私は教室の扉を乱暴に開け、泣いている奏太を抱きしめていた。「あ…茜?なんでここに…てか何して…っ」ふわふわの髪を撫でると力を抜き、身体をこちらに預けるように凭れてくる。「悪ぃ…今日のこと、誰にも言うな…」「言わないよ、誰にも」
もう一度髪を撫で「でもさ…?」
「?」「居なければとか、俺のせいとか。言わないでよ…辛いなら、話してよ…もう一人で泣かないで?」「でも…っ」「お願いだから、もう苦しまないで」「なんで、泣いて…?」そう言われ目元を拭うと温かな涙がすうっと頬を流れた。
「優しい奴なんだな…。」少し微笑みながら言う奏太に胸がドキッという音を立て、顔が夕日の紅に負けないくらい赤くなった。
そのあと忘れていたプリントをとり、二人で帰ることになった。(方向は違うのだが「送ってく、危ないし」と言われた)家の前につき、帰ろうとする奏太に「待って!」と声をかけた。「ん?」少し眠そうな顔で振り向く奏太に「メアド!交換しよっ?」そう言った。奏太はスマホを取り出し「ん…」と返事をした。
メアドを交換した後「じゃ」そう言って奏太は帰って行った。私は奏太の姿がみえなくなるまで手を振った…。
夜、明日も話したいな…そんなことを思いながら布団に潜り、顔を赤らめ、寝るのであった。