「それって恋じゃないの?」

彼女にとっては何気ない一言だけど、私にとっては衝撃的なものだった。
話したことはもちろんない。彼が認知してるわけもなく、憧れでしかない。いや、恋であってはいけない人。

「なんでそう思うの?」

「バースデーサプライズでみんながおめでとうって言ってる中でなんで泣くのよ。あんたは関係ないじゃない」

「それは感動して」

「いや、違うね。本当はあの人の隣にいる自分があんたの中で出来上がっているのよ。だからあの人がうれしくなればあんたもうれしくなる。苦しいことがあれば苦しくなる。それで助けてあげたくなる、幸せでいてほしいと願う」




「私はあんたが思ってるきれいな心で応援しているようには見えないね」





家に帰り、彼女の言葉を思い出す。確かに彼女の言う通りなのかもしれない。それでも私は彼に見返りを求めてるわけじゃない。ファンであるというのは自己満足だと理解している。
ただ、たまに自分の隣で笑ってくれたらどんなにうれしいだろうと考える。

目を瞑り、ベッドに横になる。
恋なんて今までしたこともなかった。お付き合いした人はいたけど、ままごとみたいなものだった。

「恋って、なんですか…?」


つぶやきが空を切る。彼への応援が憧れか恋かなんて恋愛偏差値の低い私にはわからない。でもまだいまは彼を応援していたい。


この気持ちに名前がつくまでは、ただ彼の幸せを願っていたい。


【完】