「ワイワイ、ガヤガヤ…」


校舎の前はすごい人数で溢れ返っていた。


「さすが入学式だね…」

薫が呆れたように言っているが、目は少しキラキラしている。


新しい生活がたのしみなのだろうか。


「美雪、もう少し人がいなくなってから行くか?」

俺は美雪に尋ねる。


「うん…」


美雪が答える。


美雪は大勢の人がいる場所が苦手だ。

特に男はだめで、美雪のそばに居られるのは俺たち7人と美雪の家族ぐらいだろう。


美雪は男が嫌いな訳じゃない、生理的にダメなのだ。

男性恐怖症と言っても過言ではないだろう。


触れられない。喋られない。のは当たり前で、だから電車もバスも大きなショッピングセンターもダメなのだ。


俺たちはそれを知ったうえで、美雪のそばにいる。

いや、知っているからこそか。


俺たちは門の手前で人がいなくなるのを待つことにした。



7人で美雪を囲むようにしながら、話している。

なんだかSPのようだか、俺たちにしてみれば、それが日常だ。


美雪のそばにいて、美雪を守る。

そんなこと当たり前なのだ。