パーフェクト エンド

『いきなりどうしたんだよ…』


ビックリしている俺の顔をカヲルは満足気に見下ろしている。


その表情からすっかり先程までの哀愁は消えていた。


『何か辛気臭くなっちゃったな〜と思ってさー。
もうそろそろ行く?』


そう言って、俺に手を差し出してくるカヲルを、真夏の太陽が背後から照らし、その黒髪を潮の香りを含んだ南風が横に靡かせている。


その姿があまりにも幻想的かつ美しくて、俺は一瞬時間を忘れて呆然と見とれてしまっていた。


『ん?どしたの?』


カヲルの声で我に返った俺は、虚空で静止していた華奢な手を掴みながら立ち上がった。


『繋いだ手だけは離さないままで〜…』


カヲルは、歌詞を口ずさみながら楽しそうに砂にミュールで足跡を作っている。


『そういえば、付き合った最初の夏も海に行ったよな?』


俺はふと、4年前の夏を思い出した。


『あ!行った行った!
懐かしいー』


カヲルは嬉しそうな声をあげた。


『お前、バカみたいに裸足で走り回るもんだから小石が足の裏にめり込んでたよな』


『そうそう!あれ取ってもらうの痛かったんだからねー!』


『ちょっと泣いてたもんな』


『はぁ!?泣いてないし!ギリギリ耐えてたし!』

『いや、普通に泣いてだろ』


心地よい波の音に撫でられながら手を繋いだ二人は、思出話に時を忘れて歩いて行く。


このまま、この砂浜が永遠に続けばいいのにと、俺は心から思った。