『冷たっ!!』


波打ち際で裸足のカヲルがはしゃいでいる。
照りつける太陽を反射させながら跳ねる滴を纏う姿は、まるで幼い天使のようだ。


突然、カヲルが海に行きたいと言い出したから近場の浜辺に来てみたが、これはこれでいいものだ。


『何してんのー?
入らないの〜?気持ちいいよ〜!』


カヲルは跳び跳ねながらこちらに向かって手招きをしている。


『絶対行かねぇー!
ガキじゃねぇんだからよ』


俺は首を左右に振りながら砂浜へと腰をおろした。


『ノリ悪ぅっ!!』


カヲルは頬を脹らませるといじけた子供のように水を蹴った後、俺の方へと駆け寄って来て隣にチョコンと座った。


『ねぇ…後どれくらいの時間、こうやって一緒に居れるのかな…』


突然の思いがけないカヲルの問いに、俺は言葉を失った。


さっきまでとは表情を一変させているカヲルの瞳は、いつの間にか少しだけ潤んでいた。


『後悔…してるか…?』

俺とカヲルは、北へと向かう軍の車列から飛び降りて、手をとり合いながらここまで走って来た。


『してるわけないじゃん。
ママとパパもきっと分かってくれてるはず…』


カヲルはそう言って俺にニッコリと微笑んだ。


『なーんてね!』


次の瞬間、カヲルは勢いよく立ち上がると拳を空へと突き上げた。