♪錆びついたメタルのエンジンに〜♪

ありったけの「今」をつめこんでさ〜♪

祈りの広場を突き抜けて飛んでく〜♪

この先には明日も未来も無いから〜♪

二人にとっては可能性すら邪魔さ〜♪


軽量化されたスピード♪
紅蓮に染まる視界の中♪
分解してゆく世界へと♪

繋いだ手だけは離さないままで〜♪







何度もリピートして同じ曲を流していたカーステレオをラジオに切りかえると、やっぱり何の反応もなく、俺は軽く溜め息を吐いた。


今日も真夏の空は、異変の片鱗すら見せず澄み渡っていて綺麗だ。


普段なら歩行者天国で賑わっているはずのこの場所。


停めている車の中で、俺は煙草をふかしながら少し開けた窓から浸入してくる熱気に顔をしかめた。


閑散としたアスファルトの上に転がっている段ボールの匂いを野良猫が嗅いでいる。



『まさか、こんな形で禁煙をやめるなんてな…』

長年、共に連れ添った故障ばかりで世話が焼けるこの車にも味あわせる久方振りの煙りが、染みだらけの天井に広がっていく。


煙草を吸ってる間だけだと覚悟を決めエアコンを止めた古臭い車内の温度は、またたくまに上昇しており、気がつけば背中は汗でグッショリになっていた。