私は毎日同じ夢を見る
思い出したくもない、過去の出来事なのに
私の脳はそれを忘れさせてはくれない、
そして、今も、私の目の前に映るのはあの時の光景...



そう、あの頃はまだ桜が微かに咲いていた中学1年の春の日のこと...









『ま、待って、天野さん、天野さん!』



『...呆れた、廊下は走っては行けないと幼い頃に習わなかったのかしら、三枝(サエグサ)さん?』



『え..あ、ごめんなさい!天野さんに用事が合って..それで..階段を降りてる天野さんを見かけたから追いかけようと思って..つい』


三枝 京花(サエグサ キョウカ)
同じ中学1年生でもあり、私の初めての友達。勿論、この頃は友達と言う関係ではなかった。クラスは別々で、特に接点もなかったのだが、お互い学級委員と言う役割になっていて最近行われた学級委員会議で顔を合わした程度の関係...



『質問の答えになってないわよ?三枝さん』



『あ、そ、そうですよね、ごめんなさ..』



『それで?』



『...え?』



『...』



『えっとー..』



『...』



『ご、ごめん..』



『じゃなくて、私に用があるのでしょう?』


私はその時の三枝さん、いや、京花が言った言葉を、表情をしっかりと覚えている...
京花は私の目を真っ直ぐ見つめたまま
無邪気な子供のような満面の笑みでこう言い放った...




『私と一緒に、歌を歌ってほしいの!!』