「ユリ、怒るなら私よ。」


沈黙を破ったのは遥先生だった。


今、母さんを呼び捨てにした!?


うわ………母さんの眉間にシワが寄っていく………。


「ユリの病室は警備が厳しくて、息子を連れて行かないとダメなのよ。」


「………そう。」


一言つぶやいて僕に向き直った。


「………サボって遥先生に取り入ったわけではないのね?」


………ばれてる?


僕が一瞬動揺したのを母さんは見逃さなかった。


「………あとで覚えておきなさい。修行メニュー増やしてやるわ。」


………笑顔の母さん怖い!


先生は僕にウインクを飛ばした。


「で、お子様は?」


そうだよ、目的はそれだよ!


「昨日父さんのせいで聞けなかったし………。男の子?女の子?」


わざと子供っぽく振舞ってみると、母さんはジト目でチラッと見てきた。


「………葵にもそんな態度でしょうから将来が怖いわ。」


「………奥様、そればっかりは私の責任ではございませんよ。」


「いいえ、広大さんは大丈夫よ。」


僕の心配………?


でも何言っているのか分からないからニコニコしておけば大丈夫かな。