「陸……ごめんね………。」


僕がすぐに呼んだメイドさんに助けられながら母さんは泣きそうな顔だった。


「父さんに頼まれているんだよ?母さんをよろしくってね。だから書斎も臨時で入口近いところに移動させたでしょ?」


心配性の父さんは母さんが倒れた後すぐに移動させたってメイド長さんに聞いたんだ。


「陸………ありがとう……。」


反抗期が来たら怖いわ、とうっすら笑顔を浮かべてくれた。









それから10時間後、母さんは無事に出産できた。


「ほら、陸おいで?」


腕の中には小さな赤ちゃんが。


「何回も母さんを助けてくれたお兄ちゃんですよ?」


あ、笑ったかも。


「笑ったわね。」


母さんは幸せそうな顔だった。


「ユリ!」


病院に不釣りあいなバタバタと騒がしい音がした。


「………葵、ここ病院よ。」


母さんの呆れた声。


あーあ、泣き出しちゃったよ。


「父さん、一回部屋出よう。」


僕はクイっと父さんのスーツを引っ張った。